事業所紹介-安芸津歳實コーヒー(安芸津町商工会)
[豪雨災害を機に、地域の方が集えるコミュニティ拠点としての機能もプラス]
2016年に自家焙煎のコーヒー豆専門店をオープンした歳實さんは、異色の経歴の持ち主。大学職員を早期退職した後、京都で牧師を要請する神学校へ3年間通い、各地で教会活動に従事してきました。父の病を機に安芸津町へ帰郷。そこで歳實さんが見たのは、人口が減り少し寂しくなった故郷の姿でした。安芸津町を元気にしたいという思いから起業を決意。世界中に愛好家がいて発展性のあるコーヒーに着目し、1968年に歳實さんの母が創業した衣料品店の隣に焙煎工房を構え、「安芸津歳實コーヒー」をオープンしました。
安芸津の魅力を世界へと発信するため、商品名は安芸町にある神秘的な7つの島にちなんで「鼻操島(はなぐりしま)」「ホボロ島」「唐船島(とうせんじま)」「藍之島(あいのしま)」「大芝島(おおしばじま)」「ハート島」「龍王島(りゅうおうじま)」と名付けました。リーフレットには、商品の説明とともに島の魅力や特徴なども綴られています。厳選した生豆を丁寧に焙煎した7種類の香り豊かなコーヒーを、島々を遊覧するように飲み比べるのもおすすめです。
安芸津町の新たなスポットとして順調なスタートを切った同店でしたが、2018年の豪雨災害で大きな打撃を受けました。ピンチを救ったのは、たまたま帰省していたという新潟大学の大学院生。「お店にコーヒーを飲みに来てくれた時、店の状況を見て『設計しましょうか?』と声をかけてくれたんです。3人の仲間とともにボランティアで請け負ってくれました」と歳實さんは話します。改修費用は安芸津町商工会のサポートを受けて申請したグループ補助金や小規模事業者持続化補助金を活用。学生たちは町を散策しながらイメージを膨らませ、町並みに溶け込むデザイン、そして町の情報発信基地としての機能を持たせた店舗づくりに重点を置いて設計しました。
こうして完成した店舗は、焙煎する様子が外からのぞけるオープンな造り。店舗奥にはイベントやワークショップが開催できる広々とした土間があり、人々の憩いの場となっています。町と地域交流を繋ぐデザインは高く評価され、2024年のグッドデザイン賞を受賞しました。歳實さんは、「まずは安芸津をコーヒーの町と呼ばれるようになることが夢。元気になった安芸津を次世代に繋いでいきたい」と話しました。
●安芸津歳實コーヒー(あきつとしざねコーヒー)
住所/東広島市安芸津町三津3572-1
TEL/0846-45-1620
営業時間/10:00~18:00
休み/月曜(祝日の場合は翌日)
HP/https://toshizane.base.shop/